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かのんへのレクイエム  3 水源池 [追悼]

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「かのん」(ペンネーム水月 秋杜)が亡くなった1カ月目の「お別れ」によせて。

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かのんが亡くなって1カ月目の日(2009年1月25日)、

彼女の家にお別れの花を手向けに行く途中、久しぶりにここに来てみた。

この水源池のある公園を昨年の雪解けが進んだ5月に早朝に君は一人で歩いていた。

術後の少しおぼつかない足取りで年老いた母親の杖を借りて、

それを頼りにしながら少しずつ歩いていた。

歩くことはまだつらかったのだけど、

緑と水の多い景色と小鳥のさえずりが君の心を癒してくれた。

君を襲った数々の不幸に対して君は立ち向かうことの勇気と、

冷静に自身をみつめる心をこの場所で育んでいたのだろう。

 

離婚により受けた瑕や職場でのストレス、股関節の不調、

息子さんの受験に向けての経済的な不安、お父さんの体調、そして、そして・・・・。

全ての不幸が君の胃を痛めつけ、君はぼくと知り合った時いつも胃痛に悩んでいた。

そして、一昨年の秋の検診の結果が君にもたらしたものは、

胃の全摘出とレベル3のスキルス癌のレッテル。

 

今は深く雪に閉ざされてとても静かなこの場所を、

やさしいの朝の光につつまれて術後の君は歩いていた。

けして、暗くつらい気持ちだけでは無い。

緑と水源池がもたらす水の豊富なこの場所で、

かわいい草花の挨拶や小鳥のさえずりが君を迎えていたよ。

小さな傷ついた君の体に明日生きてゆく勇気と、

それから始まる新たな試練に立ち向かう勇気を与えてくれた。

愛する息子を支えそして未完の君の作品を世に放つために、

まだ倒れるわけにはゆかない、もう一度また戦うのだという一途な思いだけにとらわれず、

君自身を冷静に見つめ直し、本来の明るさを失わず前向きに生きる事を教えてくれた。

一歩一歩の歩みこそが大切なのだとこの場所は教えてくれた。

 

職場に復帰しライターとしての仕事を続け、生活を守ってゆくためには、

少しでも体力をつけなくてはならなかった君。

少しづつちゃんと口から食べることと、早朝の森の中の適度な運動がぼくと君の約束。

そこから始まる数々の困難を乗り越えるためには、冷静で強い心が必要だったし、

失った体力を職場復帰の期限までに少しでも取り返す必要があったから・・

 

ここを歩く事は、

歩みを一歩前に出すことは、

緑と水の美しさを感じる事は、

かわいい草花と話をすることは、

自分の覚悟と勇気を見つめ直すことは、

風の流れを感じる事は、

再発の不安に震える自分を知ることは、

貴方にとってとても必要なことだった。

 

そして、昨年12月に命を失うまで君は何度か心震えることはありながらも、

最後まで前向きに生き、希望を失わなかった。

 

 

*かのんがこの頃、水源池の散歩について残した「言葉」と「携帯写真」は以下です。

 

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TaekoLovesParis

今は雪に囲まれているこの場所も、かのんさんが生きていらっしゃる頃は、
草花が咲き、鳥がさえずっていたのですね。
こうやって、故人を思い出すことが、一番の供養といいますね。
きれいな文章で書かれたこの記事、きっと、かのんさんの元に届いていることでしょう。
by TaekoLovesParis (2009-02-01 19:15) 

こうちゃん

足跡は残りますね。
by こうちゃん (2009-02-01 20:40) 

haru

>TaekoLovesParisさん
彼女の魂は今もきっとこの森を見つめているのだと思います。
春には大好きになったヒトリシズカの花に隠れているのかも。
by haru (2009-02-01 22:02) 

haru

>こうちゃん
そう、彼女を知る人の心にはっきりと・・
その生き方が壮絶であるほどに・・・
by haru (2009-02-01 22:04) 

mimimomo

こんにちは^^
写真、詩を読ませていただきました。
澄んだ心をお持ちの方だったんですね~
老いたお母様、ご子息を残しての旅立ち。
さぞ無念だったでしょう。
ご冥福をお祈りいたします。
by mimimomo (2009-02-02 12:29) 

Yuki

こんにちわ。
思い出の場所なんですね・・・。
お母様よりも早く旅立たれるのは、さぞかしご心配なことだった
でしょうね。
私も、母より先には・・・と常日頃、思っています。
by Yuki (2009-02-02 15:34) 

青い鳥

かのん様、スキルス癌でしたか・・・、進行が速いですからね。
幾多の苦難を抱えながら、前向きに明るく生ききったとの由、
強いお心を持った方だった事がよく分かります。
しかも強いだけではない、しなやかな優しさと、
澄んだお心の持ち主でもいらっしゃいますね。
写真と添えられた詩が、それを証明しています。
haru様のお心だけにとどまらず、このブログを読んだ全ての人の心の中にも、
かのん様は生き続けられますよ。

by 青い鳥 (2009-02-02 16:59) 

haru

>mimimomoさん
とても正直な人でしたが、思い込んだら一途に走ってしまうところもありました。ぼくの知っている彼女の一生は過激でありながらも可憐という印象です。
by haru (2009-02-02 20:37) 

haru

>Yukiさん
実は彼女は母親とはうまくいっていなくて・・
母への思いというよりは一人残す息子への思いが強かったと思います。


by haru (2009-02-02 20:38) 

haru

>青い鳥さん
ありがとうございます。
彼女が書いた言葉があちこちに残されていてそれらが彼女の思いを伝えていくのだと思います。


by haru (2009-02-02 20:40) 

Yuki

こんにちわ。
マセラティのマークはネプチューンの森なんですね。
お車に詳しいのですね。(*^^*)
by Yuki (2009-02-10 11:43) 

Yuki

こんにちわ。
色んな悲しみを乗り越えて、春を迎えてくださいね!
by Yuki (2009-02-12 19:42) 

haru

Yukiさん
ぼくはハードボイルド小説が大好きなので、マセラッティは御大、北方謙三の小説では欠かせない車です。
春が早くこないかなぁ。


by haru (2009-02-12 22:27) 

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