木に学べ 西岡常一 [読書]
この本は、いつ頃から本棚にあるのだろう。
こうして今、データーを見てみるとそれが1988年であるらしい。
もう、十数年も前のことであったのだと改めて思う。
法隆寺を今風でいうならリニュアルした宮大工が西岡常一棟梁。
語り口も、気概も昔ながらの職人気質が溢れている。
とっても頑固で、昔のやり方、伝承された方法にあくまでも忠実に拘る。
しかしながら、厳しさの裏に言葉の隙間に溢れ出るやさしさにはなんとも言われぬ心地よさがある。
この本からはいくつもの名言が世に出ていろいろな書物で紹介されている。
なかでも、木の癖をみて木を組むという考え方が素晴らしい。
自然の中で何百年も育って来た檜にはその環境の差によってそれぞれ癖がある。
その癖を読みきり、その木にあった使い方を考えるという。
この木組みの考え方はそのまま人組みの考え方と同じである。
また、その時のことだけを考えているのではなく常に何百年も先を考えて仕事をするという考え方もいい。
法隆寺は、建築後、何百年も経ってその重みで沈む事を考えて建てられているという。
確かにそういう考え方がなくては、木造の建築物がこんなに長い間、建っていられないのだろう。
道具に対する拘り方についても、一つ一つ関心させられる。
槍鉋という道具を始めてこの本で見た。
所謂、普通のかんなとの違いは本当に面白い。
法隆寺独特の柔らかさや落ち着きはこの道具があってこそと言うのだ。
ぼくはこの本を2年に一度くらいの感覚で読み直す。
その都度、忘れていたりしたことに気がついて、棟梁に叱られる。
もの事は手間を省くことだけを考えていてはいけない。
大事な仕事をする時には祈りのような気持ちを持つことだろう。
そして一つ一つ修行のように思いをこめて積み重ねていくことが大切。
道具も材料も人間も、それぞれ貴重なもの。
思いを込め使っていくと大事なものが見えてくる。
そう言われている気がする。
法隆寺を呪いの塔とした学者(梅原猛)に対する反発も面白い。
いろいろな書物、資料から発展させる学説、諸説を越える強さがある。
だって、法隆寺を立派に修繕した宮大工に学者は勝てないと思う。
経験から得たものはそれほど貴重なのだと思う。
ちなみに、ぼくは梅原猛さんの本も大好きでたくさん読んでいます。
あしからず・・・
>法隆寺を呪いの塔とした学者(多分、梅原猛)に対する反発も面白い。
単なる反発ではなく、梅原説を上回る法隆寺の全体像が提示されたのは御存知ですか?
著者は建築家、単なる学者じゃぁありません。観察と読みが現場感覚に裏打ちされています。大変面白いです。
まだのようでしたら、オススメです。
by 現場感覚 (2006-08-20 14:17)
現場感覚さんへ
おおっ そんなものが発表されているのですか?
教えてください。
by haru (2006-08-20 22:39)
応答いただき、有難うございます。
お知らせしたかったのは、あるいは御存知かもしれませんが、六月にちくま新書から出た武澤秀一著『法隆寺の謎を解く』です。大変臨場感にあふれた具体的で説得力のある本だと思います。
お読みになられましたら、あるいは途中でも、是非感想を聞かせてください。楽しみにしております。
by 現場感覚 (2006-08-20 23:02)
現場感覚さん
その本の題名は知っていましたが、読んではおりません。
早速、読んでみます。
by haru (2006-08-20 23:52)
現場感覚さん
本を今日買ってきました。
まだ、出だししか読んでいませんが面白そうです。
by haru (2006-08-21 21:36)
haruさん
ごていねいにご報告をいただき有難うございます。
>まだ、出だししか読んでいませんが面白そうです。
haruさんの誌面から拝察して、きっと楽しんでいただけると思います。
間もなく一気に引き込まれるのではないでしょうか?
競馬の予想みたいでおかしいですね。
感想を伺うのを楽しみにしています。
お邪魔しました。
それでは、続きをどうぞ…。
by 現場感覚 (2006-08-21 22:25)
現場感覚さん
「法隆寺の謎を解く」読み終われました。
梅原先生とは別の視点での考え方には感銘をうけました。
ただ、「正面から左が入り口で右が出口」とする西岡棟梁の考え方とはそれほど違わないような気がしました。
いずれにしても、飛鳥人の心と技術に現代人が追いつかないというのは不思議です。
by haru (2006-08-26 20:45)
haruさん
読了された由、早速にお知らせいただき有難うございました。
西岡棟梁の考えと、著者がインド仏教建築から引きだした考えとが違わないということは、時空を超えて凄いことのように思いますが、どうでしょう?
古代インドと飛鳥のつながりがようやく具体的に確かめられたことに感動しま
す。
by 現場感覚 (2006-08-26 23:54)
現場感覚さん
そうですね、インドと飛鳥との繋がりをこういう形できちんと検証されたというのはとっても意義深いと思います。
旧の法隆寺と現存する法隆寺との関係も、時間軸、伽藍配置のことなりなど具体的にこういう形で分析されたことも感動しました。
ぼくは、北海道に生まれて、北海道で育っているので、京都、奈良に対する思い入れは高く、特に古い建築物には興味を惹かれます。
これを契機にもう一度、奈良を回ってみたいと思います。
by haru (2006-08-28 09:56)
haruさん
今度、奈良に行かれて法隆寺と再会されたなら、ぜひその印象を聞かせてください。この本を読んだことによって、また違った法隆寺が立ち現れるかもしれませんね。
その時を楽しみにしています。
by 現場感覚 (2006-08-28 16:28)
現場感覚さん
ブログをお持ちでしたらアドレス教えてください。
by haru (2006-09-02 08:04)
haruさん
すみません。IT初心者につき、ブログをもっておりません。
でも、ときどき、haruさんを訪問させて頂きます。今後とも、よろしくお願いします。
ところで、誌面のイメージ一新ですね。鮮やかな展開振りに、期待感も高まります。
by 現場感覚 (2006-09-13 00:34)