淀んだ水（転職騒動記２） [転職]
「本当にいい時に会社を辞めてよかったなぁ」
そう以前に勤めていた会社の人にうらやましそうに言われると少し複雑な心境になる。
「そうだ、そうだ。本当に良かったよ」とこの人は言ってほしいのだろうかと思う。
それとも、ぼくに転職口を探してほしいとでも？？
解っていないと思ってしまう。
喜んで辞めたわけではないのに・・・
本当はね、好きだったんだよ。
仕事も、会社も好きだった・・・
だって大学を出てから２０年間も勤めた会社だしさぁ。
あるグループ企業の地域子会社として設立したばかりの会社だった。
入社して直ぐに｢業績が芳しくないからもしかすると撤退するかも知れない」と親会社の役員に言われて、とってもあせったのを覚えている。
でも、他に雇ってくれるところなんてなかったし・・・何社も落ちたからね
だから、がんばった。
当時は知名度もなく、業種的にもプライオリティが低くて親戚とかからも今一の評判で・・
それでも毎日、せっせとがんばって仕事したよ。
支店が増えていった。
売上高が大きくなっていった。
社員も増えていった。
入社したいという若者もたくさん来るようになった。
口では少々不満を言いながらも、会社の成長が自分の成長だと思っていた。
それがね。
会社自身が意志をもち始めた。
創業から一生懸命働いていたぼく達の意志とは別の意志をもち始めた。
そして、「ぼく達の会社」とは言えなくなった時、ぼくは悩み始めた。
そういう事を上の人にも同僚にも相談はしてみたけど・・
多くの人は、ちゃんとは聞いてくれなかった。少なくともぼくはそう感じた。
なんだか、死んだ魚のような目をした人達が多くなる。
やがて一部の声の大きい人達が我が物顔で会社の中を歩き始める。
人を罵倒するだけの意味の無い会議が多くなる。
その中でぼくはいろいろと働きかけを行なおうとした。なんとかもとに戻さなきゃ・・・
でもね、仲間と思っていた人はほとんど死んだ魚の目をして話しにのってはこない。
ぼくが本当に苦境に立たされた時も見てみぬふりをしていたなぁ。
結果としてぼくは会社を辞めた。
でも、けっして逃げた訳ではないと思っている。
環境がぼくを受け入れないなら、違う環境に移ればいいという単純なことに気付いたから・・
転職に到る苦しみや転職後の努力を誰が知ろうか・・・
なのに最近、「お前はうまくやったなぁ・・」みたいな事を言われる。
本当に複雑な思いだ。
変化を求めず、努力をせず、人の悩みを見て見ぬふりを決め、陰で愚痴ばかり言い毎日を過すだけの人達に妬まれる理由などないのだとも言いたくなる。
その会社はぼくが辞めたあといくつもの不祥事を起こした。
その不祥事に対する対応もけして、立派なものとはいえず、方向性を失ったようだ。
社会人としてのぼくといっしょに育った会社が今、自らの毒素で淀んでいる。
それは、予測していたとは言え、とっても悲しい、いたたまれない事なのだ。
たくさんの思い出や努力が今、淀みの奥に沈んでいく。
できればもう一度輝きを取り戻して自らの再生の道を歩んでほしいのだが・・
淀んだ水に住む淀んだ目をした人達・・・
それでも、その人達がうまく定年まで勤め上げられればいいと思う。
そうなのだ、それも生きる道ではあるのだから・・
自分にリスクが来ないよう、淀んだ水の底のほうに静かに生きる。
そういう生き方を責める理由もぼくには無いのだよね。
案外、最後はそういう生き方のほうが幸せってこともあるかも・・
ただ、死んだ魚のような目でぼくを見上げるのはやめておくれ。
「本当にいい時に会社を辞めてよかったなぁ」
そう言われてぼくは・・
「本当に良かったかどうかは、まだ解らないよ」と答える事にしよう。
結局、これからの人生がどうあるかは解らないんだよ。
それに今のぼくにも、悩みはあるのだし・・・。
写真 : ロダン美術館にて
結果だけを見て、人にあれこれ言うことはやっぱり不愉快ですよ。そんな思いを味わったことあるくせに、人には同じことをする。そんな人と一緒に時間を共有したくないとすら、私は思います。なんでもかんでも「隣の芝生は青く見える」「灯台元暗し」じゃダメだと思うんだけどなぁ。
by みらの (2006-08-12 01:26)
銀鏡反応さん、はるさんnice!ありがとうございます。
by haru (2006-08-14 14:43)
みらのさん。ぼくもとっても不愉快な思いをしながらも、ちょっとサラーリーマンの悲哀みたいのも感じてしまうのです。とっても失礼な人たちですが、彼らの悲しさも妙に感じてしまって・・・歳でしょうか??
by haru (2006-08-14 14:46)
みっちぃさん nice!ありがとう。
また、よってください。
by haru (2006-08-14 22:41)