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冒険好き [大人と子供]


隣の家には冒険好きな兄弟がいた。
小学校1年と幼稚園年少の兄弟だ。
いつも、虫かごを持って家の庭や近所をウロウロと冒険していた。
虫かごの中にはバッタや蝶が入っている。
冒険していない時は家の玄関に虫かごを置いてじっと餌を食べる虫を見つめていた。

 

 

なんでそんなに虫取りに熱心なのかと考えてみると、家の辺りは昔の新興住宅街で一軒家が多くしかも、一軒当りの土地が広い。そういうと高級な住宅街のようだが、最近は年寄りだけが残された感じで圧倒的に年配者だけの古い住まいが多い。そんな訳で空家も目立つ。あまり空家が近所にあるのは良くないということで、無理をして空家となるお隣を買う人も多い。そんなこんなで中には広い庭の手入れが行き届かず、野原のようになっている家もぽつぽつある。もちろん、丁寧に手を入れている家も多いのだけど芝を貼るというよりは花を植えている家が多い。近くに森林があることもあって、必然的に虫がこの辺りに集まるようになった。虫に興味がある子供にはたまらない。それになにやらムシキングとかいうのが子供の間で流行とか・・。隣の家は実は貸家で子供達の親は新しい家に建て替えている間の仮の住まいとして数ヶ月を古い隣の家に移り住むことを決めた。週末の休みの日にぼんやりとお隣の方を見ていると、子供達が虫かごと虫網をもって庭を冒険している。そっと話を聞いていると、おにいちゃんが一生懸命に虫の取り方を指導している。けれど弟君はすでに自分の男を意識しているようで自分なりのやり方に拘りたい。おにいちゃんはそんな弟の我がままを最終的に認めて「じゃあ、それでやってみて」とこれまた、大人の雰囲気だ。隣の家は大家の手入れが悪く庭は野原のようである。虫はたくさんいて子供達はいつもたのしそうだった。

ある日、我が家の2階を見つめておにいちゃんがポツンと立っていた。「どうしたの?」と聞くと「観察だよ」と言う。「何を観察してるの?」と聞くと「セミがどこに行くかみてるの」と答える。弟は幼稚園の行事でいないらしく、もう何十分もそこに立っているという。よく見ると我が家の2階の書斎の窓近くにセミが止まっていた。そこですかさず、「待っててね。」とぼくは答えて家に入り書斎に行き窓からそっと手を伸ばしてセミを捕まえようとした。そーっと、そーっと、おにいちゃんは口に手をあてて見ている。そして・・・・セミは逃げた。おにいちゃんはセミを追いかけて走っていく。書斎の窓に手持ち無沙汰に中年一人・・・なんだかなぁ・・これじゃあ、まるで仲間に入れてもらえなかった子供みたいじゃないか。

やがて、隣の家族は新しい家が完成して引っ越していった。
そして、隣の家の大家であるぼくは、隣の家の庭の雑草を刈っていた。子供達の冒険が続いている間は手入れができなかったのだ。ヒーヒー言いながら伸びすぎた雑草を刈るぼくを見て、子供みたいだと妻が怒る。そうだよ。ぼくはあの兄弟といっしょに冒険がしたかった。

子供達へ・・・
君達がだんだん大人になって、そうそうは親の相手をしていられないのも解る。
そして君達の自立をちゃんと見守りたい。
けれども、それはそれとして、言いようの無い寂しさも親にはある。
早く子離れしなさいと、隣にいた兄弟に教えられたようだ。

写真:野幌森林公園


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コメント 11

haru

2kさん noricさん
nice!本当にありがとうございます。
by haru (2006-10-26 18:03) 

必要な子離れですが、一抹の寂しさもありますね。
適度な距離ということになるのでしょうね。
by (2006-10-26 20:30) 

haru

風子さん ちょんまげ侍金四郎さん
nice!ありがとうございます
by haru (2006-10-26 23:46) 

haru

ananさん
子どもは大きくなって自立して行きますが、親にはもう見守ることしか残りません。それは待ち望んでいたような、寂しいような・・・
by haru (2006-10-26 23:53) 

JOY

ご訪問ありがとございました^^
自立していく子供も、見守る親も、きっとお互いの幸せを願うのは変わらないんでしょうね。。子供の立場しか私にはわからないのですが、、、親が好きなことを見つけて楽しそうにしているのを見るのは、嬉しいものです^^
by JOY (2006-10-27 22:05) 

katsura

先ほどは、ご来訪ありがとうございました。
子どもの頃、わたしは「虫愛ずる姫」でした。カブトムシや蝶やバッタを素手でつかんでいた子どもでしたね。
今でも、夏の光のなか、昆虫を追いかけた日々が突然、あざやかによみがえります。
by katsura (2006-10-27 23:07) 

haru

>JOYさん、katsuraさん
nice!ありがとうございます。
by haru (2006-10-28 14:40) 

kinngyo

 お久しぶりです。
しみじみと、読みました。お花も綺麗ですね☆
 子供に、母の日を盛大にしてくれないと、「母、止めます。」と言ったことが、あります。
 子離れって、しなくって良いのでないかな・・?と、思ったりして。
つらつら、書きました。
 ごきげんよう
by kinngyo (2006-10-29 02:53) 

haru

kinngyoさん
いらっしゃい!!親の思いとは別に少しずつ子供は離れていくでしょう。
反面、親は子離れしろといわれても難しいのかも知れません。
by haru (2006-10-30 09:06) 

Kimball

二人の兄弟に小生も出会ったような記憶がのこるような....
味わいのある素敵な文章だと思いました。
by Kimball (2006-11-05 12:10) 

haru

>kimballさん
本当に素朴で楽しそうに冒険をする兄弟でしたね。
離れてしまったことが残念でした。
by haru (2006-11-05 12:42) 

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